THE IDOLM@STER MOVIE~輝きの向こう側へ!を公開初日に見てきた

劇場版の制作発表があったのが去年の2月のライブ。それから約一年の月日を経て、ついに封切となった劇場版アイマス。舞台挨拶付きのチケットを手に入れることが出来たので、見てきました。

ざっと1回見てきた感想をば。まだ受け取り切れてない劇中のメッセージがいっぱいありそうで、何回かは見に行きたいですね。

以下ネタバレ含む。

ノンフィクション映画のような錯覚

アイマスというコンテンツの稀有なところは、劇中と現実の境目がかなり曖昧であることが挙げられると思ってます。登場人物のキャラクター付けがそれを演じる声優さんのパーソナリティにかなり影響されている点や、実際にキャラクターを演じる声優さん達によって頻繁にライブが行われていたりする点などによるものだと思っています。今回の劇場版は人気アイドルグループの大型ライブと、その準備のための密着取材ドキュメンタリーみたいな趣があり、まるでノンフィクション映画のような錯覚を覚えました。

ストーリー自体はそんなに奇を衒ったものではなく、「仲間との団結」「アイドルでありたいという意思」によって発生する問題を乗り越え、成長していくというアイドルマスターの基本路線に沿ったものでした。シリーズ通しての定番のやりとり(「穴を掘って埋まっておきます~」「この変態!、ド変態!」「「雪歩は黙ってて!」」「くっ」などなど)が結構な密度で埋め込まれてて、サービス旺盛でした。

ミリオン勢を通して描かれる、765アイドル達の成長

今回の作品は「ミリオンライブ!」のアイドルがバックダンサーとして、765アイドルと一緒に合宿を行うシーンが描かれています。ミリオン勢と対比してアイドルとして心身共に成長しているように描かれており、昔から成長を見守ってきたプロデューサーさん達(僕たちのことです)は彼女たちの成長に目を細めていたのではないでしょうか。そして、今回ストーリーで中心となったのは、ミリオン勢アイドル達によって起こる問題、今までとは違った角度の問題に取り組む765アイドル、とりわけ春香のリーダーとしての取り組みでした。765アイドルの中では言わなくても分かっている、お互いが違うことを考えていて、それを尊重しつつ同じ場所へ向かうことが出来る仲間だという信頼関係がある中で、それをどのようにして外に伝えるか、その輪の中に他の人たちを迎え入れることが出来るか。そういった壁にぶつかり、超えていく765アイドルやミリオン勢を丁寧に描いていました。

個人的に良かったシーンは、合宿初日の夕食で、楽しく美味しそうにご飯を食べる765勢と比べて、合宿のキツさから食欲も出ず沈みがちになっているミリオン勢のところに、真っ先にコミュニケーションを取りに行ったのが雪歩だったところ。「出来ない」ということで落ち込む気持ちが一番よく分かるのはやっぱり雪歩なんでしょうね。分かるから、何とかしてあげたいと思い、それを行動に移すのは雪歩の強さだと個人的に思います。このシーンは思わず泣きそうになりましたね。

リーダーとして自分を通すこと、その怖さ

合宿後、ミリオン勢の一人が姿を消し、彼女を巡ってストーリーは展開していきます。今までも竜宮小町に入れないことを知った美希がいなくなったり、歌うことが出来なくなった千早がいなくなったり、メンバーが個別に活躍を始めて顔を合わせる機会がなくなることで春香がモチベーションを失っていったりと、理由はそれぞれあれども人がいなくなり、それを連れ戻すという構図は何度か描かれていました。そして、今まではいなくなったメンバーを連れ戻そうとするのは他のメンバーの自然発生的な総意の元で行われていたのですが、今回は春香のリーダーシップによってそれが行われていたという大きな違いがありました。他のミリオン勢のなかでは、彼女を連れ戻すことより今いるメンバーでライブに向けてレッスンを続けた方がいいという考えを主張する人もいて、いなくなったメンバーを帰ってくるように説得するだけでなく、他のメンバーに彼女を連れ戻す協力をしてもらうように説得するところから始める必要がありました。

春香はいなくなったメンバーが「本当はどうしたいのか」にこだわり、その中でリーダーとしてどうしたいかではなく、自分がどうしたいかを中心に考えるようになります。そしてライブ会場となる横浜アリーナで、春香は全身全霊でミリオン勢のアイドル達に伝えます。そして伝えきり、全員が改めてスタートラインに立つことを決断した時、春香は涙を流し、千早に慰められるシーンがあります。このシーン、ミリオン勢も含めてわりとみんな泣いていたのですが、彼女たちは全員そろったこと、その場面に対して感動して涙を流していたと思うのですが、春香だけは違う涙を流していたように見えました。そして、それを千早は理解していたのだとも思いました。

舞台挨拶で春香役の中村繪里子さんが「もしこれで伝わらなかったら、と考えると本当に怖かった」という春香の心境を語ってくれました。やはり春香は自分を通すことを決心し、それで背負うべきものの大きさが怖かったのだと。自分を通すことは間違っていない、だけどそれによって目の前にあるものが壊れてしまうかもしれない。そういうときに正しいと思っていることを貫くのは本当に怖く、強さがないと出来ないというメッセージが込められていたと思います。そしてこれも、この作品中で描かれた春香の「成長」でした。

アリーナライブ、そして「M@STERPIECE」

そうして迎えるライブ本番。あとはただもの凄く綿密に作り込まれたライブシーンの映像にひたすら圧倒されるだけ。そして新曲のタイトル「M@STERPIECE」を見た瞬間に僕の涙腺は(数度目ですが)崩壊することになります。M@STERPIECEはアイドルマスターの一番最初のCDのシリーズに与えられた名前で、そのことが意味することはまだはっきりと説明はできないのですが、感覚的に、感情的に来るものがありました。765アイドルとしての最初の(現実世界での)CD、そのタイトルを冠する曲は当然総決算の意味合いもあるのでしょうが、ミリオン勢に送る「第一歩」の意味合いもあるのかもしれません。当然、アメリカに旅立つプロデューサー(劇中の)に向けても。

GO MY WAY!!

アニメ版のアイマスの凄いところというか、今までの積み重ねを感じるところとして、劇中の印象的なシーンで流れるBGMが今までにリリースしてきたアイマス楽曲のアレンジバージョンであることが多く、その原曲のメッセージも含めて適切に曲が使われているところです。また、挿入歌としても既存の、あるいは新曲がメッセージ性を持って使われていたりもします。

今回の劇場版では、合宿の最後で合わせた曲が「GO MY WAY!!」だったのですが、最後まで見るとこの作品のテーマをそのまま歌い上げている曲で、選曲としてはこの上ない楽曲だったと思います。後で思い返して、また涙が出そうになりました。

GO MY WAY!! GO MY 上へ!!
ほら1人1人が
この世界中で
One & OnlyでもNot Lonely
GO MY WAY!! GO 前へ!!
はりきってゆきましょう
全ての輝き
この指にとまれ

この曲、Xbox360アイドルマスターの時に作られた曲なんですよね。yuraさん本当凄い。

アイマスファンのための作品だったのか

結局のところ、いつものアイマスのフォーマットに従い、アイドル達の魅力を再確認する作品だったと言ってもいいとは思います。ただ、これがファンのための作品で初めて見る人を置いてけぼりにするような作品だったかと言われれば、個人的にはそうではないと思っています。

アイドルマスターのいいところは入り口の多さ、間口の広さだと思っています。まわりにアイドルマスターが好きな知り合いが何人かいますが、きっかけが人それぞれで面白いです。例えばソーシャルゲームの「シンデレラガールズ」で存在を知り、アニメ版「アイドルマスター」を視聴した後、PS3版の「アイドルマスター2」をプレイしてハマっていった人もいますし、CD「M@STER ARTIST」シリーズから楽曲にハマり、そこからライブに通うようになった人もいたり、当然アーケードで「アイドルマスター」をプレイしてた人もいます(僕)。

その中でどこでハマったかというと、大体みんな「アイドルが可愛い」「曲がいい」なんですよね。そのアイドルの可愛さもキャラクターデザインだけによるものではなく、様々な作品を通して行われる性格付けを気に入っているように見受けられます。これって実際のアイドルを応援している人と似てるんですよね。曲にしても、単純な曲の出来不出来のみならず、その曲が伝えようとしているメッセージや、あるいは歌われてきたシチュエーションで思い入れが深まってくることがあると思っていて、これもアイドル楽曲で頻繁に見られる現象ですよね。

で、劇場版アイマス。もちろん彼女たちのバックグラウンドを知っていたらより楽しめる作品なのは間違いないと思います。ただ、僕は「ミリオンライブ!」をプレイしていなかったのですが、ミリオン勢のアイドル候補生達はとても魅力的に感じましたし、ついミリオンライブを始めてしまいました。なので、きっと765アイドルを知らない人がこの作品を見ても、きっとアイドル達の魅力は伝わるんじゃないかと思っています。個人的に今回の劇場版で美味しいところを持って行ったのは雪歩と伊織かなあ。あと亜美真美は多分誰が見ても可愛いと思います!!

中の人

今回、横浜ブルク13で初日上映を見たのですが、上映終了後に中村繪里子さん、浅倉杏美さん、沼倉愛美さん、赤羽根健治さんによる舞台挨拶が行われました。舞台挨拶でキャストの方達が色々お話をしてくれたのですが、総じて視点がキャラクター目線だなあと思いました。雪歩役の浅倉杏美さんは、劇中映画で雪歩が真に告白するシーンで身悶えたり、別の劇中作品で雪歩が貴音とダブル主演になっていることを喜んでいたり、雪歩がまわりから褒められたときにそれを否定せずに素直に受け止めているシーンで雪歩の成長に感動していたり、本当に雪歩と感情がシンクロしているように見えました。

中村繪里子さんにいたっては、劇中の印象に残ったシーンを語る際に、アリーナで全員にメッセージを伝えるシーンの話をしてくれたのですが、「あの本気のメッセージが、もし拒絶されたらと考えると、本当に怖かった」と語る彼女は、まさにスクリーンから春香が出てきてあのシーンの後日談を話してくれているようでした。中村繪里子さんの役への入り込みっぷりは本当に鳥肌が立つほど凄いと感じました。

あとシークレットゲストとしてガミPこと坂上陽三総合プロデューサーもいらっしゃってました。登場するや否や劇場の客席に広がるウルトラオレンジの海(とまではさすがにいかず、オレンジ色のペンライトがちらほら程度)と巻き起こる「変態」コールの合唱。いやもう最高。

舞台挨拶もかなりハードなスケジュールで行われていて、中村繪里子さんは体調不良で翌日はお休みになられたとかで少し心配です。また2月のライブで元気な姿が見られたらと思います。

輝きの向こう側へ

劇中の765アイドル達は横浜アリーナでのライブを成功させたわけですが、リアルでは2/22, 23にさいたまスーパーアリーナという、横浜アリーナより一回り大きい開場で行われるライブがあります。そして5月にはPS3版「THE IDOLM@STER ONE FOR ALL」が発売され、劇中の彼女たちが活躍の場を広げていくのとシンクロして、さらに現実のアイドルマスターもどんどん進んで行ってます。このあたり、本当に劇中と現実の境目がどんどん曖昧になっていくなあと感じさせるところですね。

劇中の765アイドルと、現実のアイマスガールズ。先にドームを実現させるのはどちらなんでしょうね。あ、ゲーム中でもうドームライブ実現させたとか、そういうことは言わないで。